風が、草を舞いあげる。
一面、命が溢れる花畑。
飛び回る妖精の声。
花冠をかぶった、嬉しそうな声。

その中に、あの二人の少女の声は無い。

けれど、思い出は、笑顔は、雪と一緒に消えたりしない。
冬と一緒に去っていったりしない。



人気のない遠い野原。
緑の草の上、白い髪の少女が一人。
突き抜けた高い青空。
白い雲の下、黒いローブの少年が一人。





見上げる。
見下ろす。
手を伸ばす。
呟く。








「………」









言葉は出ない。
涙が出た。







もう一度呟く。








「……ばか。さみしいじゃん」
…何皮肉言ってるのよ。
ばかはわたしじゃん。


「………ありがとう」
笑った。泣きながら、綺麗に笑った。



もう笑えない、少女の代わりに。










たんぽぽが、風とあそんでた。